人はだんだん年を重ねるにつれて、
体のあちこちに、様々な老化現象が現れてきます。
その中の一つが、聴力の低下ですね。
視力が落ちたら、メガネを装用するように、
聴力が落ちてきたら、補聴器の装用を考えたいところです。
補聴器販売にかかわっている私が、
補聴器ってどんなものなのか、どう付き合ったらよいのか
紹介してみたいと思います。
補聴器って何?
そもそも、補聴器ってどういったものでしょうか?
新聞の通販広告には、「集音器」と書かれた
安価なものも掲載されています。
簡単に言うと、補聴器は医療機器にあたります。
医療機器は、厚生労働省が定めた基準をクリアしないと
販売をすることができないものです。
対して、集音器は医療機器ではありませんので、
誰でも製造、販売をすることができます。
そして、補聴器は使う人の聞こえに合わせて
音量や音質などを細かく調整して使います。
集音器は、基本的には音量だけを大きくします。
例えば、高い音が聞き取りづらく、
低い音はそれほど聞こえに困っていない人がいた場合、
補聴器では、足りない高い音域だけを大きくします。
それに対して集音器では、聞き取りづらい高い音だけでなく
よく聞こえている低い音も音量を大きくするので、
必要のない音が大きく聞こえ、かえって不快になることもあるのです。
聞こえに悩んだら、安価な集音器を買うのではなく、
補聴器の装用をぜひ検討してみてくださいね。
補聴器を買う時に
実際、聞こえが悪くなってきた、となったら、
どうしたらよいのでしょう。
まずは、耳鼻科を受診してみてください。
最近、聞こえが悪くなった、というと、
必ず聴力を検査してくれると思います。
補聴器の設定には、この聴力検査の結果が必要です。
また、聞こえが悪くなった、という人の中には、
耳垢がびっくりするほどたまっていて、
耳が詰まっているから聞こえが悪くなっていた、
なんていうこともあります。
実際その耳垢を除去してもらうだけで、
聞こえが改善された人がいたくらいです。
お医者さんに行くのは面倒くさい、という方もいますが、
まずは受診をお勧めしています。
それでもお医者さんに行くのはちょっと、という方は
補聴器を販売している業者に問い合わせをしてみてください。
設備の整った販売業者は、お店でも聴力測定をできるように
機械をそろえているところもあります。
補聴器は両耳装用が基本?
さて、聴力も調べて、いざ補聴器を購入となったときに
迷う人が多いのが、
片耳だけ補聴器を付けるのか、両耳にするのか、という点です。
ここで話がちょっと変わりますが、
現在(2018.6)放送中のNHK朝の連続テレビ小説
「半分、青い。」をご覧になっていますか?
あのドラマのヒロインは、小学生の時にムンプス難聴にかかり、
左耳の聴力を失った、という設定です。
彼女が聴力を失ったとき、様々な困難がありました。
まず、左が全く聞こえないことによって、音の方向がわからない。
走ったり、自転車に乗ったりするときに、バランスが取れない。
こういったハンデを乗り越えて、普通の生活をしているわけですが…
なぜ、この話をしたかというと、
補聴器を片方だけつける、ということは、このヒロインと同じで
片耳だけが聞こえても、音の方角やバランス感覚がわかりづらくなる、
ということなのです。
もちろん、ヒロインのように、完全失聴してしまった耳には
いくら補聴器を装用しても効果はありません。
ただ、一般的に言われる老人性難聴などの場合には、
その聴力に差はあったとしても、できたら両耳にしたほうが、
音の方角がわかりやすくなったり、バランス感覚も失いにくいのです。
ということで、様々な考え方はあると思いますが、
基本的には両耳での装用をお勧めします。
また、補聴器は面倒くさい、とか
装用すると目立つからイヤ、とか、
老人っぽくなるのが嫌だからしたくない、とか
様々な声をききます。
できることならば、少しでも難聴で困ってきたかな、
と自覚した時点から装用するのがよいです。
いよいよ聞こえなくなってから補聴器をしても、
聴力というのは、聞く力で、使わなければ衰えてしまいます。
いざ、というときに、その力が落ちていたら、
どんなに優れた補聴器を装用しても、聞く力は戻らないことがあるのです。
難聴と認知症の関係
最近、難聴と認知症の関係性が指摘されています。
厚生労働省が平成27年度に発表した、
認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)の中で、
認知症の発症予防策の一つとして、
様々な病気の予防とともに、難聴についても触れられています。
難聴によって、外的な刺激から遠ざかることで、
認知症が進むのではないか、という考えがあるようです。
こういった観点からも、早めの補聴器装用が効果的です。
ただし…
補聴器をするかしないかは本人次第
たいていは、難聴になった本人よりも、
周りのほうが「聞こえ」が悪いことに不便を感じています。
特に、老人性難聴の場合は、徐々に聞こえなくなっていくので
本人の自覚がないことが多いです。
また、「補聴器は年寄りがするもの」という気持ちもあり、
難聴を認めたがらないお年寄りも多いのです。
補聴器は決して「年寄りがするもの」ではありませんし、
今の補聴器は昔のものに比べて、小型になり、
目立たないものが多くなっています。
ただ、本人がどうしても認めたくない、というところに
家族や周りがいくら補聴器を勧めても、
また無理やり買ったとしても、
その気がない人には、まったくダメなことが多いのも現状です。
補聴器は安い買い物ではありません。
納得がいくまで話し合い、また試聴やレンタルなどを利用して
聞こえるというのは快適なことだ、と理解してもらうことが大切です。
「聞こえ」に困ったら、ぜひお医者さんや販売店に
相談してみてくださいね。