補聴器をつけるタイミングが知りたい!いつ装用するのが正解なの?

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日常生活を送っていると、なんだか今まで聞こえていた音が聞こえにくくなってきたかも、と感じるときがありませんか?
聞こえなくなったら補聴器をしなくてはいけないのかも、と考えたりするのですが、いったいどんなタイミングで装用するのがよいのでしょうか?
補聴器販売に携わる私の経験から、正解のタイミングを探ってみます。

補聴器ってどんなもの?

そもそも、補聴器ってどういうものなのでしょうか?
新聞やテレビの通販などでも、1万円前後から「集音器」という安いものが広告に出ていますよね。
しかし、補聴器販売店に行くと、片耳5万円くらいから、などと言われてびっくりしたことがありませんか?
一口に「耳の聞こえ」と言っても、人それぞれ。
どういった音域の音が苦手で、聞き取れないのかはその人によってみな違います。
一般的に、年齢を重ねると高い音が聞こえづらくなる、と言われています。

「モスキート音」という言葉を聞いたことがありませんか?
若い人には聞き取れる、蚊の飛ぶような高い音ですが、30代後半から40代くらいになると全く聞こえなくなると言われます。
こういった聞こえの場合、低い音域は比較的聞こえやすく、高い音ほど聞こえにくいことがあります。
また、長い間騒音にさらされていると、低い音域が聞こえにくくなる人もいます。
補聴器は、聞こえづらい音域の音だけを適正な音量にして聞こえるようにするものです。
高い音が聞こえない人には高い音を、低い音が聞こえない人には低い音を大きくします。
集音器とよばれる装置は、イヤホンやヘッドホンの音量を調節するように聞こえてくる音をそのまま大きくするだけなので値段が安くなるのです。
全体的にすべての音域の聞こえが低下している人には集音器が向いていることもありますが、音域によって聞こえ方がまちまちの場合は、不必要な音まで大きくしてしまうため本当に聞きたい音が効きづらくなることもあるのです。

聴力は力

聴力、という言葉の通り、聴力には力が必要になります。
私が携わったお客様でこんな方がいました。
お客様は90歳を超え、すでに聞こえが悪くなってから10年以上が経っていたとのこと。
聴力を調べた結果を見ると、高度難聴(耳元に口を近づけないと聞き取れないレベル)でした。
耳鼻科で検査したオージオグラム(聞こえのグラフ)をもとに、補聴器を設定して聞いていただくことになりました。
つけた結果、「やかましいけど何を言われているかわからないからこんなもの意味がない」と言われたのです。

これはどういうことかというと、「やかましい」ことから、音自体は十分に伝わっていることがわかります。
本来、音が聞こえてくれば、会話や周囲の音について理解ができ、「よく聞こえる」となるはずです。
ところが、「何を言われてるかわからん」というのは、音がどういった音なのか脳が判別できていない状態、ということなのです。
つまり、聞こえない期間が長すぎて脳への伝達力が落ちてしまっている、ということです。
こういったケースの場合、根気よく補聴器を装用することで脳への伝達力、つまり「力」を回復させる必要が出てきます。
しかし、90歳を過ぎてからの「初めての」装用は難しいのが現実です。

適切な装用時期とは?

先ほどの例を見ると、年齢が高くなって「聞こえづらい時期」が長くなれば長くなるほど、最初に装用した時の効果が低いことがわかります。
では適切な装用時期はいつなのでしょうか?
難聴にはいくつかの段階があります。

軽度難聴
小さい声や騒がしいところでの聞き取りが難しくなります。
中等度難聴
普通の会話で聞き取りが難しくなってきます。
相手との距離を近づけないと会話が聞き取りづらくなります。
高度難聴
耳元に口を近づけないと会話が理解できなくなります。
重度難聴
会話はほとんど難しくなります。

軽度難聴では、普段は少し大きな声でしゃべってもらえばおおむね理解ができるのですが、細かい効きわけができなくなってくることが多くなります。
よくある例では、「1時(いちじ)」と「7時(しちじ)」や、「佐藤さん(さとうさん)」「加藤さん(かとうさん)」などの言葉が聞き取りにくくなります。
こういった症状が出ている場合、たいていは高音域の聞こえが低下しているケースが多いのですが、本人はあまり聞こえに不自由していないと思っていることが多いです。
しかし、周囲は「話しかけても一度で通じない」「同じことを何度も聞き返される」などの不都合が起きていることがほとんど。
年齢を重ねるほどに難聴は進む傾向があるので、軽度だから大丈夫、ということでもありません
「ちょっと不便を感じて耳鼻科を受診したら軽度難聴だった」というくらいが実は補聴器を装用する最初のチャンスです。
この段階で補聴器を装用すると、聞こえそのものは大きく変わるわけではないことも多いのですが、「聞き取り能力」は確実に効果が出ます。

もうちょっと難聴が進んでからでも…では遅い?

どうしても「補聴器は年寄りがするもの」というイメージが強い方も多いように思います。
60代や70代では、まだまだ体力も気力も充実されている人が多く、「年寄りのするような補聴器」をするなんて考えられない、と言う人も多いのが現実です。
「もうちょっと難聴が進んでから考える」とおっしゃるお客様も多いのですが、これが実は曲者。
もうちょっと進んだ難聴、というのが、中等度よりも高度に近くなっていよいよ本格的に聞こえなくて困る、というレベルだと、先の例のように「音は聞こえるけれど理解ができない」という状態を生みやすいのです。
どうしても補聴器をつけたくないお客様に無理にはおすすめしたりしませんが、私の販売の経験から一言いうならば、

「もうちょっとは5年、10年先のことではなく、1年後くらいのこと」

です。
一般的に老人性難聴と呼ばれる年齢からくる難聴は、徐々に少しずつ進んでいくのが特徴です。
突然聞こえなくなるのとは違い、少しずつ「聞こえないことに慣れてしまう」ことがあります。
まだ大丈夫、と思っているうちに、軽度だった難聴は中等度に、そして高度になってしまうこともありうるのです。
特に聴力は力を必要としますから、若いうちのほうが力を取り戻すのも早いのが現実。
年齢が高くなればそれだけ力が落ちてきます。
なるべくこまめに耳鼻科を受診して、何度も販売店に足を運んでみてもよいと思います。
たいていの補聴器販売店は、試聴もありますし、場所によっては貸し出しも可能なところもあります。

「補聴器をつけているのが目立つのがイヤ」という場合にも、小さくて目立ちにくいものや、イヤホンのようにスタイリッシュな形の補聴器など、各メーカーが様々なものを販売しています。
ひとつのお店で納得がいかなければ、いろいろなメーカーを試聴してみるのもいいと思います。
補聴器は特別なものではなく、「聞こえづらいから使う眼鏡のようなもの」と思ってもらえるとよいのではないでしょうか?

いかがでしたか?
実は私自身も突発性難聴を経験したりしたことで、左耳の聴力が若干落ちています。
今は40代ですが、これから50代、60代になるときには確実に補聴器が必要になるはずです。
不便を感じたらすぐに装用しようと思っています。
特別なもの、と思わず、ぜひ早めの装用をおすすめします。